夜中から雨と風が強くなっていて、朝になってもおさまってなかった。一度は6時に起きたものの、外は真っ暗だしこの天気だと準備をする気が起きないので7時まで二度寝。
しかしそれでもまだ天候が回復する気配がない。この状態でテントを撤収するのは相当に億劫だし、走り出しても尋常じゃない寒さになりそうだ。最悪はこのままここに連泊かもと思いながら朝食のインスタントラーメンを作っていると、いつの間にか雨が雪に変わっていた。マジか!
気温は5℃、確かに冷え込むなとは思っていたが。1000mの高原とは言えまだ10月なのに雪とは、カザフスタンの冬を見くびっていたかもしれない。ちょっとこれは今後に不安が残るな……。
昨日の雨のときは「これだけ寒いならいっそのこと雪のほうが楽なのに」とか思っていたけど、いざ本当に雪になるといささか怖気づく。ちょっとこの状況でテントから外に出る気がしない。
しかし幸い、天気はすぐに回復。雪は弱まり、空には晴れ間も見える。急いで準備して10時半に出発。
天気は回復しても風は強いままなので、走り出すと非常に寒い。上半身はそれなりに着込んだので大丈夫だが、手足が冷たい。あっという間に感覚がなくなってくる。
向かい風の中、10km/hも出せずにひたすら耐えながらの走行。次の大きな町のシムケントまでは100km程だが、とても今日中にはたどり着けそうにない。
【今日のピクトさん】
丘の上(恐らくはこのルートの最高所1100m位)にあった検問所にて。警察活動中のピクトさん。そんなことよりも看板についた氷柱が気になる。
検問所を過ぎてから下りになるが、向かい風であまり速度が出ない。正午になって日が陰り始め、一旦は上がった気温もまた5℃になっていた。このまま走り続けたら手足が凍傷になってしまうのでは無いだろうか。
出発から30km程の所にある町で昼食。「ショルパ」というらしい。薄味のスープで、骨付き羊肉とジャガイモ・ニンジン・タマネギ。世界中のどの文化にでもありそうなほどありふれたスープだけど、とにかく温かい物が嬉しい。
昼食後、走り出してすぐにドイツ人サイクリストと遭遇。彼はこの先ビシュケクまで行って中国ビザにチャレンジするそうだ。あまり装備にお金をかけないのか、それともこだわりがないのか、グローブが軍手だった所に親しみを覚えた。でも風邪気味だったようだが、この先大丈夫だろうか?
それにしても他のサイクリストと会うことでこんなに元気付けられるとは思わなかった。10月にしてこの寒さで、まだまだ始まったばかりの、恐らくは孤独な走行になるカザフスタンに不安を感じていたが、まだこの辺を走っているサイクリストに会えて嬉しかった。仲間を見つけて「一人じゃないんだな」と思えた。
そこから少し走ったところの商店で今夜のビールを仕入れようとしたが売っていなかった。とりあえず水だけは少し補充しとこうと思って500ccのペットボトルをレジに持っていったら、店主の男性が「お金はいらない」と言ってくれた。
優しさと、そして陽気さが嬉しい。
左の男性が店主。右二人のおじさんもフレンドリーだった。それにしても色々な顔立ちがあって面白い。中央のおじさんなんて日本で軽トラに乗って農協に出かけていきそうな顔してる。
カザフにもこういう看板があるんだ
標高が下がってようやく安定した晴れになってきた。風はまだ冷たいが日差しが温かい。
丘陵地帯でアップダウンの走行。17時頃になってキャンプ場所を探し始める。メインのルートから外れたところに適度に手入れされた林があったので今夜はここでキャンプ。線路が近くて多少うるさいものの、人に見つかる可能性は低いし林の中でも程好く開けているので気持ちが良い。久しぶりに落ち着ける野宿場所を見つけることが出来た。
地図によるとすぐ近くに村があって、テントを張ってもまだ明るかったのでビールを買いにいった。最初に見つけた小さな商店のおばあさんが、こちらが日本人とわかると「自転車?」とジェスチャーしてきた。その通りなんだけど、何でわかったのだろう? 「日本人と言えば自転車旅行者」みたいな反応だった。ひょっとしたら以前にも日本人サイクリストが通りかかったのかもしれない。
夕食は毎度おなじみのトマトスープに麺を入れたもの。レパートリーを増やさないとすぐに飽きてしまいそうだ。
【今日のビール】
アッサリ系のピルスナー? ラガー? これといって味わいのようなものはなかった。0.64Lというのが珍しい。
余談だが、カザフでは小数点に「.(ピリオド)」ではなく「,(カンマ)」を使う。
【走行データ】
走行距離:64km
総走行距離:7832km