10/24 アウテケ・ビ近辺→アラルクム (89km)

朝起きると晴れ、しかも昨日と同じ風が吹いているようだ。ボチボチと準備をして10時に出発。

s-IMGP0121

s-IMGP0122

↓テントの周りには何かの巣穴がたくさんあった
s-IMGP0125
 
 
 
走り出すと昨日よりは風は弱いが、このまま吹き続けてくれれば北に進路変更したときに追い風気味になってくれそうだ。

1時間ほど走って街への分岐点に着く。できればここで補給しておきたかいが、それには本道から4kmほど離れて街に入る必要がある。もし今日中のアラル到着を目指すならそのタイムロスは避けたいところなので、補給は諦めることにした。今日中に着けさえすればそれでも何の問題もないし、仮にたどり着けなくて野宿することになっても食料や水は何とか足りそうだ。
 
 
 
少し風景が変わってアップダウンが続く。

s-IMGP0126

s-IMGP0128

s-IMGP0131

s-IMGP0133
 
 
 
北に進路変更すると風がやんでしまった。おいおい、昨日あれだけ南寄りの風が吹いたのに。それどころか気付いたら北風が吹き始め、それは次第に強風に変わっていった。

今まで北風なんてほとんど吹かなかったのに、とことん天気は俺の味方をしてくれないらしい。身も心もクタクタで、ここまで来ると笑うしかなくなってくる。
 
 
 
アラルに着いたらもう列車移動してしまおう。

最近は“旅の疲れ”が出てきたのか、なんとなく面白くなかった。そこに来てこの変化のない風景の連続。アラル海は楽しみではあるがそれ以降のカザフに期待が持てず、モチベーションは低い。休息日を終えて出発するのが億劫に感じ、走っていても音楽や録音したラジオを聴いて退屈に耐えている感じだ。しかもラジオを聴いていると東京の風景が思い出されて、ホームシックとは言わないまでも色々と考えてしまう。吉祥寺の井の頭公園でも散歩してから駅前で一杯飲みたいなとか、谷根千あたりをぶらりと散策してから上野に出て昼間からビールが飲みたいなとか。

もともと完全自走が目的ではなかった。地域情勢や気候次第では列車や飛行機の移動も視野に入れていた。それでももちろん自走できるものならポルトガルまで完走したいとは思っていた。しかしそれが面白くないものになってしまっては意味が無い。アラルからアクタウまでの1800km、今のところはまだ耐えられる気候だがこれから厳しい寒さがやってくるであろうし、何しろこの“退屈”には参った。

そう考えると、列車移動してしまったほうが良いように思える。今はさっさと新しい環境に飛び込みたいという欲求が大きい。それは少し疲れ始めた心のリフレッシュにもなるだろう。

まあこのままアクタウに行ってしまうとアゼル・ビザの関係(11/20以降でないと入国できない)で足止めを食らってしまうので、ビザの取り直しが可能かどうかという問題は残っているが。
 
 
 
しかし、走りながらそう決めてしまっても、まだ「本当にそれで良いのか」という気持ちが残っていた。完全自走へのこだわりは自分で思っていた以上に強かったようだ。確かに「完全自走が目的ではない」とは言ったものの、日本からここまで一本の轍をつないできたと思うと、達成感があり、それを途切れさせてしまうのは惜しい気持ちだ。しかもアラルからアクタウの道なんてこの旅でなければこの先の人生でも決して訪れることは無いだろう。ひょっとしたらそこには自分の想像もしなかった風景が待っているかもしれない。日本から続いた風景――一本の連続したシーンのように少しずつ変化してきた風景が、そこだけ抜け落ちてしまうのだ。後で振り返った時にこの決断を後悔するかもしれない、そうなることが恐ろしかった。
 
 
 
しかし現実的に、この環境にいつまでも気持ちが耐えられるとも思えなかった。
 
 
 
s-IMGP0138

17時頃に雨が降り始める。向かい風のせいで今日中にはアラルに着けなくなってしまったのでキャンプ地を探していると車に呼び止められた。なんだろうと思って顔を見ると、なんと3日前にあったオジサン3人組の内の一人だった。しかも向こうはちゃんと名前も覚えていてくれた。この雨で気温も低いので心配してくれて、ヒッチハイクしたらどうだと勧められた(このおじさんは進行方向が逆だった)。それでも少なくともアラルまでは自走で行くつもりだったのでその旨を伝えると、この先5kmのところに1000テンゲ位で泊まれるところがあると教えてくれた。この雨と風の中のキャンプは億劫なので、屋根のあるところで寝られるのはありがたい。5kmならまだ明るいうちに着けるのでとりあえず行ってみることにした。
 
 
 
おじさんの言っていたとおり5km程走ると小さな村があった。それらしい建物は見当たらなかったが、タイミングよく話しかけてきた子供に「宿はある?」と聞くと、その子供が案内してくれた。

そこは普通の民家で、宿というよりは家の空いている部屋を提供しているといった感じだ。部屋を見せてもらってまあここで良いかと思って値段の確認をすると「お金はいらない」という返答。勘違いしていたのだが、どうやら本当に普通の民家が厚意で泊まらせてくれるということのようだ。

そうわかると急に低姿勢になってしまったが、ともかくありがたく泊まらせてもらうことになった。
 
 
 
夕食はジャガイモと肉の炒め物。とても素朴な料理だが美味しい。家族との一緒の食事なので遠慮気味で食べていたが、その家のおばあちゃんがもっと食べなさいとしきりに言ってくるので満腹になることが出来た。

s-CIMG1532

s-IMGP0139
 
 
 
寝る場所もわざわざ一部屋あてがってくれた。ここの家族は、日本からの旅行者とわかってもあっさりと受け入れてくれて、その後もこちらにあまり構うでもなく程好い距離感を保ってくれる。思った以上に気楽な民泊だ。

それでも9歳の男の子は興味津々で、食後に日本の写真を見せたり、スマホのロシア語のアプリを見せたりして遊ぶ。

こういう出会いがあると、やはり列車移動してしまうのが惜しい気がしてくる。列車で飛ばしてしまう区間には、こういう出会いが幾つかあるかもしれない。
 
 
 
とりあえずアラルまではあと40km程。そこで列車計画がそもそも実現可能かどうかを検討してから決断しよう。

とにかく今日は暖かい終わり方ができてよかった。
 
 
 
【走行データ】
走行距離:89km
総走行距離:8797km

カテゴリー: カザフスタン(Kazakhstan) タグ: , , パーマリンク

10/24 アウテケ・ビ近辺→アラルクム (89km) への0件のフィードバック

  1. JIN のコメント:

    よし!日本に帰ってきたら上野で飲み会決定だな!

JIN へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です