昨日の時点では自転車は貨物車に乗せると言われたが、なぜかそのまま客車の通路へ積み込む。日本の駅のようにホームと列車の床の高さが揃ってるわけではないので、乗せるのがとても大変。
乗せたは良いが荷物満載の自転車を通路に置いているのでとても邪魔だ。こんなんで良いのか? と思っていたら案の定、やはり貨物列車へ移動させることになった。
次の停車駅で積み替えを行おうとしたのだが、ここで問題発生。貨物列車に乗せるなら別途お金が必要だといわれた。しかしチケット購入時点ではそういう話は何もなかったので、これは恐らく正規の支払いではなく、乗務員のポケットに行くものだろう。
最初は突っぱねていたのだが、いつまでたっても自転車を乗せようとしない。いいかげん腹が立ってかなり強い語調で話していたのだが、それでも埒が明かないのでとりあえず値段を聞いてみると「1万テンゲ」と言ってきた。
ははっ、
ふざけんな。
1万テンゲあったらアクタウに着いてからさらにアラリスクまで往復できるぞ。
カザフの鉄道職員は腐敗しているという情報をどこかでチラッと見てはいたが、どうやら本当らしい。これには本当に頭にきて貨物車担当の乗務員とほとんど喧嘩のように話していたのだが、向こうはドアを閉めてしまって全く受け付けようとしない。最終的にやはり客車へ戻すことになった。
客車に積んだ自転車は荷物をばらして前輪を外し、乗務員室の隙間に詰め込む。ここで今度はこの乗務員が金を請求してきた。「こんなに手が汚れてしまったのだから、5000テンゲくらいはもらわないと」というふうに、積み込み時に汚れた手を見せ付けてきた。そんなの手を洗えば良いだろう。これがお前たちの仕事だろう。
もう本当にうんざりして、怒りで表情筋が引きつる。こんなに腹が立ったのは久しぶりだ。
この人ともかなりやり合ったのだが、結局は2000テンゲ支払うことになってしまった。既にかなり強く怒りをぶつけていて、それでもまだ収まっていなかったので2000テンゲ札を手で握りつぶして渡してやったら、今度は逆ギレされてそれを受け取ろうとしない。恥知らずな汚い仕事をしているくせに、変なところでプライドが高いようだ。
もう本当にカザフが嫌になってしまいそうだ。もちろんこんな一事だけで「カザフスタン」というものを一括りに捕らえてしまうのは間違いだが、そうは言っても、こういうことで「印象」というものは変わってしまうのだ。少なくとも、今の時点ではもう二度とカザフの列車は使いたくないという気持ちである。
そんなわけで怒りと不信感で、周りの乗客と触れ合う気も起きない。
二段ベッドの上段は非常にスペースが狭く、普通に座ることもできないくらい天井が低い。これで下段と同じ料金なのだろうか?
食事時になると周りの人が下段に座ることを勧めてくれるのだが、それ以外の時間はひたすら寝転がって過ごす。それに疲れると車両の乗車口に行って立ちながら外を眺めて過ごす。
車両内は暖房と人いきれで少しムッとする暑さ。しかも時々おばちゃんが魚の燻製を売りに回ってきて、なんともいえないニオイが充満している。
優雅な列車旅、とは行かないまでももう少し快適なものを想像してビールまで買ってきたのに、これはなかなか過酷な移動になりそうだ。
夜の闇が迫る空を背景に遠くを走る長距離トラック