今日は休息日。でも観光しないのももったいないので午前中は観光して、午後はブログでも書くかな。
そう考えていたが、結果から言うとガッツリ歩き回ってしまった。
ホテルの朝食を食べ、泰子さんと一緒にカイセリ城周辺の散策へ。
スパイス屋。
カイセリ名物、パストラミの起源である「パストゥルマ」。牛肉の周りに香辛料のペーストがコーティングされている。
結構硬いが、ニンニクが効いていて美味しい。せっかくなので少し購入。
バザール内で絨毯屋の少年に目をつけられ、店へ連れて行かれる。しかし、絨毯を売る話にもっていかせる暇を与えず、ヤスコさんは彼に色々と案内させる。
色々と店の中を見せてもらってからアッサリと絨毯屋の少年と別れる。流石だ……。無駄足を踏まされた少年が気の毒にさえ思えてくる華麗な振り切り方だ。
その後はジャーミィ(モスク)内を見学。一人ではなんとなく入りにくくて今までモスクに入った事はなかったが、ヤスコさんは物怖じせずに入っていく。
実際に入ってみると、周りの人はそれほどこちらを気にするわけでもなく、意外とすんなり溶け込める。しかしもちろん、彼らの礼拝の邪魔にならないような配慮が必要だ。
しばらくジャーミィ内の雰囲気を味わう。
ジャーミィの外では最近亡くなったと思われる人の棺が置かれていた。どういう儀式なのかはわからないが、その人たちの親族らしい人々が周りで話している。
白いスカーフをかけられた棺が女性、ジャケットをかけられた棺が男性ということなのだろう。
ジャーミィには身体を清める水場が必ずある。
でもここで身体を清めずにそのまま中に入っていく人もいる。それは信心深さの違いなのだろうか。
次は別の絨毯屋を見学。
これまたカイセリ名物らしいマントゥ。
マントゥは中央アジアのマンティやグルジアのヒンカリの一連の流れのうちの一つですな。でも一つ一つがとても小さい。トマトスープに浸かっていて、ヨーグルトをかけて食べる。
デザートはキュネフェ。
細い糸状の小麦粉の生地を編み重ねたようなものにチーズが挟んであって、それを焼いてシロップに漬けた物。(正確なところは調べてください)
これが非常に美味しかった。焼きたての香ばしさ、外はカリッとしつつも、中のチーズがよく伸びるので独特の食感。チーズの塩気とシロップの甘みがまた……。この美味しさには少し感動。
ランチ後も我々は歩みを止めない。
写真左のトンガリ屋根は多分誰かのお墓なのだが、グルジアで見た教会の屋根も似たような形状だった。不思議な類似だ。
いつの間にやらモスク巡りになっていた今日の街歩き、最後はここ。
外観は普通のモスクだったが、中は綺麗なタイル張り。しかも運良く礼拝の時間に当たったらしく、許可を得て見学させてもらった。
異文化だなぁ。
日本にいるころはイスラームについての知識なんてほとんどなく、イメージもうまく湧かなかった。知識については今もあまり無いが、それでも実際にこの目で見て耳で聞いて雰囲気を感じることができている。これは日本にいて「知識を得る」というのとは別の貴重な体験だ。この「体験」こそが、旅に出る大きな意味のうちのひとつだ。
それにしてもトルコの街にはモスクが沢山ある(トルコだけでなく、中東もそうなのだろう)。それだけ生活の一部として根付いているということだろう。正教会系のグルジアでも、町を歩く人が教会の前を通り過ぎるときに、教会に向かって十字を切っているのを目にした。こうしたことは、非常に緩い宗教観を持つ多くの日本人(というか自分)の目には新鮮にうつる。人生の内で宗教が占める割合の違いは、生活習慣や価値観にも間違いなく大きな違いをもたらしているだろう。
さて、日が暮れたのでジャーミィのハシゴも終わり。あとはビールでも買って帰ろう、という時にこんな店を発見。
トルコの都市にはこの手の店がよくある。釣具と銃(モデルガン?)が一緒に売られているのだが、なぜこんなに多くあるのか不思議だった。なにせどの街にも何軒もあるのだ。
そのことをヤスコさんに話すと、「じゃあ入ってみよう」ということになった。
中に入ると店員が迎えてくれた。話を聞くと、ここにあるのはモデルガンではなく、猟銃等の実際に弾が出る代物だそうだ。なるほど、それなら確かに「猟」という意味では釣具と一緒に売られているのも納得がいく。
しかし……、
こういった自動小銃や拳銃も売られている。これらはどうやら実銃とエアガンの中間に位置するようなもののようだ。弾は5.56mm弾とか9mmパラベラム弾とかそういう“本物”ではないが、火薬を使って発射する専用弾を使うらしい。この辺は恐らく趣味や護身用なのだろう。
ヤスコさんによると、トルコは銃器の所持は許可制で認められているらしい。その時も、まだ中学生くらいの男の子が親と思われる男性と一緒に来て銃を見ていた。なかなか物騒な話である。
ガンショップの主人にチャイを頂いてから、複雑な思いで店を出る。トルコはアメリカのような銃社会とは状況が違うだろうが、それでもあまり微笑ましい社会とは言いがたいようだ。
それでもついつい銃を構えた写真とか撮ってしまいましたが。
近くの酒屋でビールとトルコ・ワインを買い、ホテルに帰ってから二人で乾杯。今日買ったパストゥルマと、これまでのお互いの旅の話を肴にして。
それにしても今日は良く歩いた。そして良く見た。普段一人でも街歩きはするが、こんなに深いところまで分け入っていくような歩き方はしていなかった。一人でモスクに入っていく勇気も無かったし、興味を持ったものを「確かめてやる」というような強い意志を持てずにいた。
それが今日、ヤスコさんと一緒に歩いて、というかヤスコさんに引っ張られて色々なものを見ることが出来た。これは自分にとってはとても貴重な経験だったし、なにしろ楽しかった。カイセリなんて観光地としてはそれほど目立つものでは無いが、一つの街を、ただ通り過ぎるだけのものにするか、記憶に強く残るものにするかは、結局は自分次第なのだ。
これから訪れるであろう街。これからの自分の街歩き。それが少し変化したかもしれない、そんな一日だった。