教会の鐘の音で目が覚める。外は既に日が昇って明るい。あ、これはやっちまったな。
8時半、寝坊だ。
昨日はよっぽど疲れたのかもしれない。昨日の日記も書いてないし、もう面倒になってしまったので焦らずに準備をする。朝食を済ませ、ネットで少し調べごとをしてから11時ごろに出発。
↓高そうな雰囲気の入り口だったが、意外と手頃な値段だったホテル
ホテルの裏には教会があったが、そのすぐ近くにモスクもある。
町の中心部は雑然としていて少し埃っぽい。道は広いが路上駐車だらけで混沌としている。
中心から外れると新たに整備された地区があり、カラフルな集合住宅が並ぶ。
アルバニアに入った当初はカザフスタンやグルジアを思い出した。旧共産圏というのも影響しているのだろうか。しかし町を見ると中国に似ているようにも感じる。急速に開発が進んでたり、「ヨーロッパ」という言葉からは連想できない雑然とした雰囲気とかがそう感じさせるのかも。
今日は平坦な道。気温も高く、漕いでいると少し汗ばんでくる。路肩が狭く若干走りにくいが、ペースは悪くない。しかしなにしろ単調な道なので考え事をしながら走る。
カザフスタンのことを久しぶりに思い出したが、振り返ってみればあそこも興味深い場所だった。カザフ東部は少し違うが、アラル海やカスピ海の最果て感や、全体に漂う閉塞感、社会が行き詰っているような印象(と言ってもそこに住む人々はそれほど悲観的ではないようだったが)は他の国では味わえなかったものだ。また行きたいかというと微妙なところだが、なんとなく懐かしく感じた。
この辺のGSはホテルを併設していることが多い。聞いてないのでわからないけれど、恐らく値段もそれほど高くはなさそう。
ここでサンドイッチとクレープ(ハムとチーズ)とヨーグルトをテイクアウトして、町外れに移動して昼食。
↓現役の路線なのかわからないけど、ニワトリやロバが線路上に放されている
↓と思ったら、ちゃんと運行していた。そして落書きだらけの車体。
所々でトーチカを見かける。鎖国状態だったころの名残だ。
ビーチリゾートという雰囲気が漂って個人的には居心地が悪いが、この町はリゾートである以前に古い歴史を持つ港町なので、オフシーズンであっても地元の人たちで活気がある。
ネットで調べておいた宿へ行く。場所がわかりにくかったが、人に聞いてたどり着いたPepetoホテルは静かな住宅地の中にあった。部屋はツインで1500レク。オフシーズン価格万歳。他に宿泊客はいないようで静かに過ごせそうだ。
荷物を置いて観光に。この町にはいくつか遺跡がある。宿の主人がロンリープラネット(欧米でメジャーなガイドブック)のドゥラスのページのコピーをくれて、それを見ながら町を歩く。
↓宿の近くにある大きなモスク
まずは地図(これはGoogleMap)にRotondaと載っていたところへ。ギリシャのテッサロニキにもロトンダという建築物があったので気になっていた。
実際に行って見るとあったのはビザンティン時代のマーケット跡とローマ時代の浴場跡。説明が書いてある看板には“Rotonda”の表記は無い。
テッサロニキのロトンダは廟(後に教会とモスクに改装)だったが、それとは関係ないのだろうか。(後日調べたところ、“Rotonda”というのは「ドームを持つ円形建築」のことだそうで、なにかそういう建物が建っていたのだろう)
次は円形劇場跡。2世紀初頭に建造されたものらしい。
座席部分は石とセメントのようなもので埋まってしまっている。
300レクで入場できるようなので折角だから見学してみる。入り口の係りのおっちゃんに300レクを払おうとしたら小銭が足りなかったが、「いいよ、いいよ!」と言うのであるだけの小銭を渡して入場。
閉館時間間際に入ったので急いで見学を済ませて出てきたら、おっちゃんが帰り支度をしながら待っていた。「どこから来たんだ?」と聞かれたので「日本から。自転車で旅してるんだ。」と答えると、「おー!そうかそうか!」と喜んで笑顔を向けてくれた。
すぐ近くにある古い城壁は分厚くて堅牢な造り。
円形劇場の跡は偶然見つけたモスク。説明によるとアルバニアで最古のイスラム礼拝施設とあるが、そのわりには全体的に綺麗で新しさを感じる。内部のミフラーブと説教台は木製で、これもとても綺麗。
モスクを出てからはスーパーを探して街を歩いていたが、カフェの前で話していた3人の若い男から「チーナ(中国人)!」と声をかけられた。あー……。
中国人のことを馬鹿にしてこう呼びかけてくるというのは、旅行者の間ではよく聞く話だ(それが日本人や韓国人である可能性なんて考えないのだろう)。うんざりした気持ちで「日本人だ。中国人じゃない。」と英語で訂正すると、言ってきた男はポカンとしていたが、英語を介するらしい他の男は「あぁ」と納得したように頷いていた。
まったくもってがっかりした気分だ。別に中国人と間違われたことが嫌なのではない。そういう人間性の底が知れるような下らない差別意識を見せられたのが腹立たしいのだ。こういうことはやはり後進国で多く起きる事態のように思える(そういう認識自体も差別なのかもしれないが……)。手近な誰かを馬鹿にして、手っ取り早く優越感に浸りたいというのは、大小の差はあれ誰にでもある欲求なのだろう。
もう観光する気も失せたので、スーパーで買い物をして宿で自炊。
満腹になるとあまりに眠くてそのまま寝てしまったが、夜中に起きて日記とブログを片付ける。
今日も疲れた。結構早いペースで走ったから、明日に疲れが残りそうだ。
【走行データ】
走行距離:84km
総走行距離:13052km