6時半に起床。このホステルには共同キッチンが付いているので、そこで朝食。昨日買っておいたソーセージを電子レンジで温め、インスタントスープを作り、パンと一緒に食べる。もそもそ。
朝食を終えるころに、昨日一緒に夕食を食べたトルコ人が出発。こちらもぼちぼちと準備して9時半に宿を出る。
今日は少し雲がある。珍しいことだ。ギリシャのヨアニナ以降、実に10日間もずっと快晴が続いていた。そこに来てこの変化は、やはり天気の悪化の前触れだろう。天気予報を見る限り、この先1週間は雨マークが並んでいる。どうやらこの辺では天気は比較的長いスパンで変化するようだ。晴れている限りはそれは気持ちに安心感を与えてくれるが、一度雨に変わると困ったことになる。
とにもかくにも走り出す。ここから先に進むには陸地に深く入り込んだ湾に沿って行く道もあるが、それだと結構距離が伸びてしまうし途中で飽きそうなので、湾の入り口にある渡し舟を使うことにする。
コトル湾は非常に穏やか。天然の良港であるコトルだが、今は漁港では無いらしく、湾内に船は一隻も出ていない。夏場はレジャー用のヨットでも出るのだろうが、今は静かなものだ。
確かに良い場所である。もう少し暖かくなったらアパートでも借りてゆっくり過ごしたら最高だろう。ビールでも飲みながら釣り糸を垂れ、それに飽きたら海岸を散歩する。いいなぁ。
1時間ほど走ると湾の入り口に着く。ここにあった小さな教会。面白いのは、この教会の壁に銃眼が設けられていたこと。確かに防衛上重要な地点だろうから、かつては監視所か何かとして機能していたのかもしれない。
宗教施設が争いに使われるというのは、やはり違和感を覚えるものだ。十字軍の遠征とか、日本にも僧兵の歴史があるけれど、宗教というのは別に平和のためにあるわけでは無いんだね。
11時ごろにレペテイン・カメナリ・フェリーの乗り場に到着。丁度乗船が始まるところでタイミングよく到着できた。といっても船は頻繁に行き来しているようなので、タイミングを逃してもそれほど待たされることは無さそうだ。運賃は自転車が1ユーロ。
対岸までは10分もかからずに到着する。短い時間だけど、船ってやっぱり良いな。
↓途中にあった素朴なモスク
ヘルツェグ・ノヴィという町に着いたので街中を通ってみようと思ったが、こちらから行くと一方通行をずっと逆走する事になり、それはあまりに忍びないので諦める。結局バイパス道に戻って町を通過。
どこか昼食を取れる店はないかと探しながら走っていると、対向車線にサイクリストが。彼はデンマーク人で、この先のギリシャからエジプトへ渡り、そこから南アフリカを目指すそうだ。
この先の道の情報を聞くと、クロアチアの一部で風が異常に強いところがあるそうだ。そういえばこの前会った女性二人組みのサイクリストも同じようなことを言っていた。かなり危険ということなので、これは要注意だ。
彼と別れて少し進んだところにある店で昼食。昨日の夜の店のように、ショーケースに並んだ肉を選んでその場で焼いてもらう。今日は鶏肉を選んで、それをサンドイッチにしてもらった。2.5ユーロ。
この頃になるとかなり雲が増えてきた。そして東風が強くなってきている。雨はまだ降りそうにないが、これは荒れた天気になりそうだ。
国境はそこからすぐなのだが、200m程の峠の上なので登るのが大変。まずは国境手前のGSで調理用のガソリンを購入し(0.68ℓで0.75ユーロ)、モンテネグロのイミグレへ向かう。
職員はフレンドリー。こちらが日本人とわかると「ガンバオーサカ!」と言ってきた。サッカー好きらしい。すんなりとスタンプを押されてモンテネグロを出国。
ここからクロアチア側のイミグレまでが結構な登り。こんなに大変な国境越えは初めてだ(体力的な意味で)。
↓モンテネグロ内の走行距離。
モンテネグロとは対照的に、クロアチア側の職員は実に無愛想。質問すら受けることなく入国スタンプを押されて終了。
さて、クロアチアに入って通貨がユーロから「クーナ」に変わるので両替をしようと思ったが、両替屋はおろか店も無いし人もいない。しまった、モンテネグロ側にあった銀行らしき所に寄っておくべきだった。
仕方ないので走り出す。ドゥブロヴニクまで行けば何とかなるだろう。
しばらくは緩やかな下りで、追い風にも助けられて快調に進むが、次第に道はアップダウンに。
今のところ舗装は良く、道幅もそこまで狭くは無い。
夕方頃にまたしてもサイクリストと遭遇。今度は中国人とドイツ人の夫婦だ。彼らは僕と同じようなルートで東に進み、中国に入ってからは中国南部を目指すそうだ。(www.biketoasia.com)
中国国外で中国人サイクリストに会うのは初めてだった。実際、彼女自身「中国人はビザ取りが大変なのよね」と自嘲気味に言っていた。本人は明るく言っていたが、苦労も多いだろうなと思う。頑張ってほしいところだ。
そういえばこの人たちにとっては僕がこの旅で初のサイクリストとの出会いらしい。さっきのデンマーク人の男性もそう言っていた。やはりこの時期のヨーロッパは西進するサイクリストは少ないようだ。
そこからドゥブロヴニクまではあと少し。なのだが、その手前には結構な登りが待っていた。汗だくになりながら坂を登り、断崖絶壁の道を進む。
街まではまた下り坂。街を出るときにまた坂を登るのかと思うと若干うんざりするが、仕方が無い。
調べておいた宿を探すが見つからない。近くを通りかかった犬の散歩をしていた男性に聞いてみたが、その人もわからないという。実はそのおじさんは別の宿のオーナーだったのだが、わざわざ一緒に宿探しに付き合ってくれた。そのおじさんの宿に行ってもよかったのだが、「階段があるから自転車だと大変」ということだったので、やはり当初の宿を探すことになったのだ。
それにしてもこの辺には本当に沢山の宿がある。SOBEやApartmaniというもので、どこもアパートメント式や民家の一室を貸し出すタイプの宿のようだ。値段もそれほど高くは無さそうだが、この時期にやっているかは不明。
おじさんも別の人に聞いてくれたりしてしばらく捜し歩き、暗くなってからようやく宿を見つける。もともと住所はわかっていたのだが、住所の並び方がわかりにくかった(地元のおじさんですらわからなかった)のでなかなか見つけられなかった。
おじさんは見つけた宿の人に話を通したらアッサリと帰ってしまった。散々つき合わせて申し訳なかったが、とにかく助かった。
この宿もアパートメントタイプ。一泊24ユーロのところを二泊で43ユーロにしてもらった。
本当はもっと安いホステルもあるのだが、そちらはドミトリーでも16ユーロくらいする。一泊5ユーロの差なら自炊で相殺できる、という言い訳のもと、ついつい甘えた選択をしてしまった。実際のところこの辺のホステルならキッチンがついてる可能性もあるから、やはりホステルで節約すべきなのだろうが……。
しかしまあ、こちらは宿のおばちゃんは親切だし、キッチンで気楽に自炊できるし、快適に過ごしてしまいましょう。イタリア以降はこんな贅沢許されそうに無いけど。
銀行や両替屋は旧市街(ここから15分くらい歩く)に行かないとないらしいので、とりあえず宿のおばちゃんに両替してもらってスーパーで買い物。物価はどうななんだろうと色々見て回るが、よくわからない。少し高くなったような気がするが、1クーナ=約17.6円なので計算が非常に面倒臭く、頭が回らない。
夕食はインスタントパスタ。生ハムをツマミにビールを飲み、ワインを開け始めたところで眠気が押し寄せて、気が付いたら寝てしまっていた。